諦める。
嫉妬する。
片想いに徹する。
売り込む。
奪う。
七々子がしたことは、彼の恋人美咲と友達になることだった。
あたしだったら？
“片想いに徹する”
好きな気持ちって、どうしようもないものだし、そのヒトに恋人がいたからってすぐに諦められるものでもない。
でも、そのヒトが幸せならそれを邪魔するようなこと、壊すようなことはしたくはない。
好きなヒトには幸せでいて欲しいから。
あたしは、好きなヒトがいると“付き合いたい”と思うより、ただその気持ちを“伝えたい”って思う。
だから相手に恋人がいても、自分の気持ちは伝えるかな。
本人の口からちゃんと断られた方が気持ちの整理がつけやすいし。
そしたら、前に進めそうだし。
七々子がしたこと。
あたしにはできないなぁ・・・
彼女だと知ってて、近づいて友達になる。
そして、その彼女と同じバイト先で働く。
彼女から彼の相談に乗る。
最後に、七々子は美咲を陥れた。
自分の恋のために裏切った。
そして、彼を手に入れる。
そんな風にして、彼を手に入れて果たして本当に幸せなんだろうか？
そこまでして、手に入れたいものなのだろうか？
ヒトの幸せを奪う権利はあたしにはないから。
そんな風に手に入れても自分が幸せになれるとは思えない。
きっとあたしは、恋人になれなくても、友達でいられるのならそれで満足。
結局七々子は彼を手に入れても、不安で不安でしょうがなかった。
電話を待って
会える日を待って
愛されるのを待って。
彼と美咲が別れるように仕向けた時から、どこにいても美咲がいた。
彼とふたりで過ごしていても、意識の向こう側に影のようにぴたりと貼り付いていた。
友達を裏切って手に入れた彼。
そうまでして手に入れたかった彼。
結局、かつて自分が裏切った美咲によって、自分がしたことと同じことをされて彼とは終わりを迎える。
自分がしたことは絶対いつか自分に返ってくるものなのだ、と思う。
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